オスマン朝の文書・帳簿を古文書学・アーカイブズ学的視点から学ぶ演習形式のセミナーです。
第12回 オスマン文書セミナーのご案内
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)では、基幹研究「中東・イスラーム圏における分極化とその政治・社会・文化的背景」(代表:黒木英充)の事業の一環として、2020年1月11日(土)と12日(日)に第12回オスマン文書セミナーを開催します。研究上、オスマン朝下で作成されたさまざまな手書きの文書や帳簿を読む必要のある方を中心に、広くイスラーム史を研究される方のご参加をお待ちしております。ただしオスマン・トルコ語の授業を行う場では決してありませんのでご注意ください。また、本セミナーは科研費基盤(B)「イスラーム圏における簿記史料の通時的・共時的研究」(代表:髙松洋一)の研究会との共催となります。
第12回目の今年度はこれまでとは若干趣向を変え、特定の様式の史料類型には限定せずに、ワクフ(寄進)に関わる文書・帳簿史料を取り上げて講読します。具体的には、ワクフ設定時に作成されるワクフ文書(wakfiye)のテキストからはじめ、ワクフの財務管理に関する帳簿(defter)、ワクフ対象になった施設の職員の任命・俸給に関する嘆願書(arzuhal)や「書付(tezkire:役所間の通信)」等を取り上げる予定です。ワクフを一つの切り口として、ワクフ制度に関連してオスマン朝の官僚機構で作成された種々の様式の史料に触れ、文書行政の運用を考えてみようというのが、今回のねらいです。
またワクフはイスラーム法上の寄進行為ですので、ワクフ文書を読解するにはイスラーム法学的な知識も必要となってきますが、最初のワクフ文書の講読を通じて独特の用語に慣れ、具体的なワクフ運営に関わる種々の史料の講読にスムースに入っていけたらと考えています。財務管理や俸給の記録に関しては、ここ2回ほど本セミナーで扱ってきたアラビア文字のスィヤーカト(siyakat)書体に関する知識も必須となります。スィヤーカト書体の史料は語彙がかなり限定されているとはいえ、独特のペルシア語表現や、点を打たない速記文字のような形を単語ごとに覚えていかなければなりませんが、初めて参加される方にもわかるように説明を工夫したいと考えています。
本セミナーでワクフ文書を取り上げるのは初めてですが、帳簿(第10回)、嘆願書(第7回・第8回)、書付(第11回)などは近年のセミナーで取り上げてきましたので、今まで取り上げたことのある類型についての様式については、初めての参加者にも配慮しつつ、以前の配付資料を活用して簡潔に説明する予定です。
なおセミナーへの参加資格として、例年通り次の1.または2.のいずれかにあてはまることを条件といたします。
- 「現代トルコ語の読解力があり、かつアラビア文字に関する知識を有する」
- 「ペルシア語あるいはアラビア語の読解力があり、かつ現代トルコ語文法の知識を有する」
参加を希望される方は、お名前、ご所属、連絡先住所・電話番号、メールアドレス、専門分野、セミナー参加可能日程を明記の上(部分参加も可)、下記の申込先まで 12月19日(木) までにEメールにてご連絡ください。こちらから、セミナーで用いる資料を郵送いたします。なお参加費は無料です。
また、東京近郊以外に在住の方には旅費の支出も検討しておりますが、予算の都合上、旅費支給を希望される方は、12月13日(金)までに その旨お知らせください。
問合わせ・申込先:
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 フィールドサイエンス研究企画センター事務局
e-mail:fsc_office@aa.tufs.ac.jp (@は半角)
プログラム等の詳細は以下の通りです。
日時 | 2020年1月11日(土)14:00-18:00 / 2020年1月12日(日)13:00-18:00 |
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会場 | 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 3階大会議室 (303号室) *1月11日(土), 12日(日)とも (〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1) http://www.tufs.ac.jp/access http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/about/access |
使用言語 | 日本語 |
共催 | 基幹研究「中東・イスラーム圏における分極化とその政治・社会・文化的背景」 科研費基盤(B)(17H02398)「イスラーム圏における簿記史料の通時的・共時的研究」(代表者:髙松洋一(AA研所員)) |
講師 | 髙松 洋一(AA研) |
1月11日(土) | |
14:00-14:15 | 趣旨説明 講師・自己紹介 |
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14:20-16:00 | オスマン朝のワクフ文書の様式について |
16:20-18:00 | ワクフ文書の講読 |
1月12日(日) | |
13:00-14:40 | ワクフに関する文書の講読 |
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15:00-16:40 | ワクフに関する帳簿の講読 |
17:00-18:00 | 総合討論 |