本システムの構築と運用は、共同研究課題「中東都市社会」のサブ・プロジェクトとして行われます。ベイルート、テヘラン、イスタンブル、アレッポの4都市を対象に、GoogleMapsをベースに幅広い年代の古地図を重ね合わせて、異なる年代の地図を透過、あるいは並置して表示させることができるものです。さらに、プロジェクトの関連研究者がそこに様々な研究情報を書き込み情報を共有していくとともに、かつてないアーカイブとして一般に公開していくことを目指します。
書き込み情報としては、地図上にポイント、ライン、ポリゴンといった基本的な空間情報を自由に設定し、そこに関連するテキスト、画像、音声も搭載可能にする予定です。
中東に限らず、世界の主要都市の多くは、近代から現代にかけてメガロポリス化して都市空間を巨大化させる一方、エネルギー環境の変化による建造物の高層化や、再開発や戦争、災害などにより、空間構造そのものを劇的に変化させてきました。
これにともない、歴史的な出来事や人々の記憶も、現在私たちが目にする空間だけではなく、かつて存在した空間の中に位置づける必要が生じます。中東の都市に集まり、生きてきた多様な民族的・宗派的背景をもつ人々がもつ歴史的・文化的な情報や記憶、そして現代の研究者が新たに獲得する知見や情報は、本ベースマップシステムの多重多層の面の上に位置づけられます。さらにこうして蓄積される情報は、研究者によって縦横に連結されたり比較されたりすることによって、新たな知を生み出し、研究の可能性を広げる基盤となることが期待されます。
中東の多くの都市は、言うまでもなく世界最古の歴史をもつものであり、将来、この多層ベースマップシステムは、より古い時代に向かって掘り下げる方向で発展させることができるでしょう。また、中東の他の都市のみならずアジア・アフリカの多くの都市についても同様のプロジェクトを展開させる潜在力をもっていると言えます。
本ベースマップシステムは、親プロジェクトの「中東都市社会」が国際共同研究であるため、英語を使用言語とし、書き込む権利を有するのは上記共同研究課題の共同研究員と研究協力者に限ります。
GoogleMapsと古地図の重ね合わせなどについては こちらからどうぞ。
(黒木 英充)